面会交流と間接強制

親権・面会交流

1 はじめに

 間接強制とは、債務を履行しない義務者に対し、一定の期間内に履行しなければその債務とは別に間接強制金を課すことを警告することで義務者に心理的圧迫を加え、自発的な債務の履行を促すものです。
 調停で面会交流について取り決めたにもかかわらず、あるいは審判で面会交流の実施について命じられたにもかかわらず、監護親が当該取決めあるいは当該命令に従わない場合、非監護親は間接強制をすることができるのでしょうか。

2 最決平成25年3月28日民集67巻3号864頁

 最決平成25年3月28日民集67巻3号864頁は、以下のとおり、特定の場合には、面会交流についても間接強制が認められる旨判示しました。
 「給付を命ずる審判は、執行力のある債務名義と同一の効力を有する(平成23年法律第53号による廃止前の家事審判法15条)。監護親に対し、非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判は、少なくとも、監護親が、引渡場所において非監護親に対して子を引き渡し、非監護親と子との面会交流の間、これを妨害しないなどの給付を内容とするものが一般であり、そのような給付については、性質上、間接強制をすることができないものではない。したがって、監護親に対し非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判において、面会交流の日時又は頻度、各回の面会交流時間の長さ、子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠けるところがないといえる場合は、上記審判に基づき監護親に対し間接強制決定をすることができると解するのが相当である。」

3 給付の特定に欠けるところがないといえる場合

 平成25年決定が示した「給付の特定に欠けるところがないといえる場合」と言えるためには、それぞれの事項について、以下のような特定がなされている必要があります。
■面会交流の日時又頻度
 「1か月に1回」というような特定がなされている必要があり、「2か月に1回程度」などでは不十分です。
■各回の面会交流時間の長さ
 「1回につき6時間」あるいは「午前10時から午後4時まで」というような特定がなされている必要があり、「1回につき6時間程度」などでは不十分です。
■子の引渡しの方法
 「子の受渡場所は、所定の駅改札口付近とする」というように特定がなされている必要があります。

4 小括

 以上のとおり、調停調書あるいは審判書に基づく面会交流の間接強制をするためには、複数の事項について特定がなされている必要がありますが、そのように特定のなされた面会交流要項を定めることは円滑な面会交流の実施との関係で必ずしも適切とは限らないので注意が必要です。

弁護士: 林村 涼