財産分与に伴う課税

財産分与

1 財産分与を受ける者に対する課税

財産分与による取得財産については、原則として贈与税が課せられません。

もっとも、財産分与の額について、婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額、その他一切の事情を考慮してもなお過大であると認められる場合には、例外的に当該過大部分の財産が贈与税の課税対象となります。また、贈与税や相続税を回避するために離婚を手段として財産を取得したと認められる場合についても、当該取得財産が贈与対象財産であるとして課税されることになります(相続税法基本通達9-8)。

他方で、財産分与により不動産を取得した場合、財産分与の内容次第では、贈与税とは別に不動産取得税がかかることがあります。
具体的には、①実質的に夫婦の共有財産の分割と認められ、かつ、②当該財産分与が婚姻関係を清算する趣旨のものである(清算的財産分与)といえる場合のみ、不動産取得税が発生します(東京地裁昭和45年9月22日判決、大阪高裁昭和51年1月27日判決、東京都「不動産取得税課税事務提要(平成30年3月30日改正)」参照)。
特に②の要件について、慰謝料の代わりとしての財産分与(慰謝料的財産分与)や、相手方の扶養のために行われる財産分与(扶養的財産分与)の場合には、不動産取得税が課税されることになるので注意が必要です。

2 財産分与を行った者に対する課税

他方で、財産分与として不動産等の資産を譲渡した者については、譲渡所得税が課せられますので注意が必要です。

この課税の基準時については、財産分与の内容が当事者間の協議等により具体的に確定され、かつ、確定された内容に従った財産の支払、譲渡等が完了した時点とされております(所得税法基本通達33-1の4)。

この点について、判例(最三小判昭和50年5月27日・民集29巻6号641頁)は、「財産分与に関し右当事者の協議等が行われてその内容が具体的に確定され、これに従い金銭の支払い、不動産の譲渡等の分与が完了すれば、右財産分与の義務は消滅するが、この分与義務の消滅は、それ自体一つの経済的利益ということができる。したがつて、財産分与として不動産等の資産を譲渡した場合、分与者は、これによつて、分与義務の消滅という経済的利益を享受したものというべきである。」と判示しております。

弁護士: 土井 將