財産分与に伴う課税2

財産分与

1 はじめに

本コラムでは、別コラム「財産分与に伴う課税」において解説した「財産分与を行った者に対する課税」について、より掘り下げて解説いたします。

なお、本コラムは課税についての大まかな考え方を説明するものであり、課税額の詳細な算定方法等は、別途相続に精通した税理士に相談することを推奨いたします。

2 財産分与を行った者に対する課税が生じる場合

財産分与として不動産等の資産を譲渡した者については、当該譲渡に「譲渡所得」が発生したといえる場合に譲渡所得税が課せられます。
この「譲渡所得」は、概要以下の算定式で算出されます。

譲渡所得=(①資産譲渡による収入)-{(②資産取得にかかった費用)+(③資産譲渡時にかかった費用)}

財産分与の場面における(①資産譲渡による収入)とは、離婚によって負担した分与義務の消滅という経済的利益を指します(最三小判昭和50年5月27日・民集29巻6号641頁)。これは、端的にいえば財産分与の対象財産の評価の基準時における評価額をいいます。
(②資産取得にかかった費用)には、対象財産の購入時に支払った代金、仲介手数料、印紙税等の税金、登記手数料等が挙げられます。
(③資産譲渡時にかかった費用)には、測量費や印紙代等が挙げられます。

以上より、財産分与の対象不動産等の購入時の価格と比較して、分与時の評価額に利益が出ていれば譲渡所得が生じているとして譲渡所得税が課税される可能性があります。他方で、対象不動産等が値下がりして分与時の評価額の方が低い場合は、譲渡所得が生じておらず、譲渡所得税は課税されないことになります。

3 居住用不動産の財産分与における特別控除

財産分与の対象財産が自宅不動産である場合、居住用財産の譲渡の特別控除が受けられることがあります。具体的には、自宅不動産を離婚後に譲渡することで、譲渡所得から3000万円を控除されます。

なお、この特別控除は、配偶者や親族に対する譲渡の場合は利用できないため、「離婚後」に譲渡を行う必要がある点に注意が必要です。

4 確定申告等の手続・その他の課税

財産分与により譲渡所得が発生し、譲渡所得税が課税される場合は確定申告が必要となります。他方で、不動産の値下がり等により譲渡所得自体が発生しない場合、確定申告は不要です。もっとも、本来であえば譲渡所得が生じるものの、特別控除により譲渡所得税が発生しないこととなる場合は、確定申告が必要になります。

また、不動産を財産分与として譲渡する場合、移転登記に際して登録免許税が課税されるため、離婚をする夫婦間でその負担について取り決めをしておくことが望ましいでしょう。同様に、財産分与を行った年の固定資産税や都市計画税についても、離婚をする夫婦間でその負担について取り決めをしておくことが望ましいでしょう。

弁護士: 土井 將