調停離婚成立後の諸手続

離婚

家庭裁判所に離婚調停の申立てをし、相手方との間で調停が成立した場合、法律上、調停成立の時点で、離婚が成立し、夫婦関係が解消されることになります。

ただ、離婚調停が成立した後も、以下で述べるような諸々の手続を取る必要がありますので、ご注意ください。

1 離婚届の提出

調停成立によって離婚が成立した場合でも、裁判所は、調停調書を作成することまでしかしてくれず、戸籍上の手続まではしてくれません。

そのため、申立人または相手方の方で、本籍地又は届出人の所在地の市役所に離婚届を提出しなければなりません(調停離婚においては、申立人が届出を行うのが通常ですが、具体的には、調停条項の内容によります。)。

このとき、調停調書の謄本及び戸籍謄本(本籍地以外の市役所で届出をする場合)を持参する必要があります。調停調書の謄本については調停成立後裁判所から送達されますし、戸籍謄本については本籍地所在の市役所で取得することができます。

なお、法律上、調停離婚が成立した日から10日以内に、市役所に離婚届を提出しなければならないとされており、正当な理由なく、期限を徒過した場合、過料の制裁が課される可能性がありますので、ご注意ください(戸籍法77条・63条、同135条)。

2 離婚の際に称していた氏を称する届(戸籍法77条の2)

婚姻のときに氏(名字)を変えた側が、離婚後も、婚氏(婚姻期間中の名字)を使い続けたいという場合、市役所に届出をすることが必要です(婚氏続称届)。

この婚氏続称届については、離婚成立の日から3か月以内に届け出る必要があります。この届出をした場合、婚氏のままで新しい戸籍が作られることになります。

3 子の氏の変更

離婚が成立した場合でも、夫婦の間に出生した子どもの氏(名字)は変わりません。親権者が誰になるかに関係なく、子どもは、婚姻によって編成された戸籍に残ることになりますし、氏(名字)も婚姻期間中の名字を使用することになります。そのため、婚姻のときに氏を変えた側が子どもの親権者となった場合でも、離婚届を出すと、自分だけが元配偶者と子どもの戸籍から抜けることになります。

その上で、子どもを自分の戸籍に移すためには、離婚届を提出した後に、家庭裁判所に対して、子の氏の変更の許可の審判の申立てを行わなければなりません。申立てにあたっては、新しく作られた自分の戸籍の戸籍謄本(全部事項証明書)と子の戸籍謄本(全部事項証明書)が必要になります。

4 年金分割

調停条項に年金分割の条項がある場合も、調停成立だけで年金分割の効果が生じるわけではなく、年金事務所等で年金分割の手続をしなければなりません。

年金分割の手続については、離婚成立の日から2年以内に行わなければならず、仮に、元配偶者が死亡した場合には、死亡の日から1か月以内に手続を行う必要がありますので、ご注意ください。

 

以上の手続については、離婚調停について弁護士に依頼していた場合でも、ご自分で行っていただくことになるのが一般的かと思われますが、ご不明な点があれば、弁護士とも相談の上、手続を進められるのが良いかと存じます。

弁護士: 野田俊之