他方配偶者の親族との不和を原因とした離婚

離婚の可否・不貞慰謝料等

1 はじめに

結婚観・家族観が変わりつつある昨今においても、「嫁姑問題」は婚姻関係に少なからず影響を与えているように思います。
そこで、配偶者の親族との関係から生じる軋轢を原因とした離婚が争われた事例について紹介したいと思います。

 

2 裁判例

【名古屋地方裁判所一宮支部昭和53年5月26日判決】
夫の母が、妻に対し、「嫁は食べろと言われても遠慮するもんだ」「あんたは太っていて大丈夫と思ったが豚肥で取柄がない」と罵ったり、妻の両親に対しても、「茶碗は割るし、地味な女で新嫁らしくない、相返答も出来ない、何一つとして取柄のない出来の悪い嫁だ、何をやらせても遅い」などと非難した事例において、裁判所は、「(姑)は(妻)に対し……悪罵、干渉を行い、(夫)も又これを抑制するどころか同調して(妻)の努力を認めず反抗すると直ちにその両親を呼つけて親族ともども一方的に非難していたものでこのような事情のもとでは(妻)が家庭生活の中で陽気になりえよう筈もなくその後の別居に至る経過をみると(夫)及び(妻)の所為は婚姻を継続しがたい重大な事由に該るといわざるをえない」として、妻からの離婚請求を認めました。

 

【東京地方裁判所平成17年1月26日判決】
他方で、夫が、妻の母から、「馬鹿」、「ここから落ちて死ねばいい」等と罵られ、その関係が悪化し、ついに別居に至った事例において、裁判所は、別居期間が2年5か月と比較的短期であること、妻とその母が、尋問において夫との関係修復に積極的な姿勢を見せたこと等を考慮し、「(夫)と(妻)が、互いにこれまでの自らの行動、態度の是非について顧み、相手方との生活をやり直す努力をするというのであれば、婚姻関係の修復の妨げになる特段の事情は見当たらない」として、夫からの離婚請求を退けました。

 

3 おわりに

以上のとおり、(一方)当事者において、配偶者及び親族との関係修復への意思が強く、関係修復の実現が現実的であれば、裁判所は婚姻を継続し難い重大な事由を認めない傾向にあると考えます。
結婚観・家族観が変わりつつある中、婚姻生活における親族間の関係性は多岐にわたり、現代ならではの問題も生じてくることと思われます。
配偶者の親族との関係から生じる軋轢が原因で、離婚を悩まれている方は、是非弁護士にご相談ください。

弁護士: 森 遼太郎